カヱル

ピアノを弾いた。たぶん教室をやめてからロクに弾いてないから、実に5年振りなのだ。

まぁ…指とか動きませんでした。思ってた以上に。

たまごが入る手。
指先で、肩の力を抜いて。
ハノン1番。
楽譜は読めた。とりあえず安心。
これで転調とかして弾いてたんだからやっぱり続けることって大切なんだなーなんてな。
今じゃカラオケで原曲キーと違うと音はずす始末。
ハノン2番。だいぶ動いてきたけどすでに肩が痛い。
ブルグミュラーは見つからなかった。「アヴェマリア」と「貴婦人の乗馬」がお気に入りだった。「アラベスク」は嫌いだった。楽譜どこいっちゃったんだろ。

探すのをあきらめてソナチネ1番。
たぶん初めてソナチネ1番を弾いたのは小学生だった。やっぱり弾けなくなってた(笑)
無理しないで片手から。指くぐりすらもううまくできない。
何回も弾いた。
楽しかった。
ピアノが楽しいと感じたのは小学生以来かもしれない。
歳をとるごとに私は正直になるみたいだ。
いろんなものを捨てるとおんなはきれいになる、みたいなことを智恵子抄で読んだ。ほんとかな。
中学の時の私のクラスの合唱コンクールの練習中のカセットテープが出て来た。あの私の伴奏は、ただの怒りのかたまりだった。ずっとフォルテ。強弱も何もあったもんじゃない。毎日怒ってたな。

ピアノを弾く人を好きになった。あの人は今もきれいな指でピアノを弾くんだろうか。曲を作るんだろうか。何度かあの人の前で弾いた「戦場のメリークリスマス」はもう弾けなくなってしまった。

そんなことを考えながら片手ずつ、ゆっくりと。
気がついたら2時間ぐらい経っていた。


結局両手でつっかえないでソナチネの最初のページを弾くことはできなかったし、引っ越したときに買ってもらったこのピアノは所々鍵盤の音がでなくなってたけど、たまに実家でピアノと遊ぶのもいいと思った。
ピアノも愛でれば応えてくれると思っている。

疲れてすぐ眠った。
小中学の記憶がごちゃごちゃになった夢を見た。
もう会えない。なんとなくそう思った。